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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

梅咲きぬ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,286 字 · 16 页

青空文庫

「こんなものを作りました」

やがてかな女は、端ぎれを継いで作った肩蒲団をとって、そっと嫁の前に押しやった。

「あなたのお寝間は冷えますから、これを肩に当てておやすみなさい、これでなかなか温かいものですよ」

その日お城から帰った直輝は、妻の顔色が見ちがえるように冴え冴えとしているのにおどろいた。

「どうしたのだ、なにかたいそうよいことでもあったようではないか」

そう云うと、加代は胸に包みきれぬよろこびを訴えるように云った、「はは上さまから頂戴ものをいたしましたの」

「……なんだ」

知ってはいたが、わざと直輝はそう訊いた。

「肩蒲団でございます、ご存じではございませんでしょう」

加代はむしろうきうきしたともいえる調子でそう云った、

「やすみますときに、枕と肩との間に当てるものでございますの、老人の使うものでしょうけれど、わたくしのからだを案じて、はは上さまがご自分で作って下すったのです」

「それがそんなに嬉しいのか」

「旦那さまにはおわかりあそばしませんでしょうけれど」

加代はそう云いかけ、ふと眼をあげておのれをかえりみるように云った、

「わたくしもはは上さまのように、やがては嫁に肩蒲団を作ってやれるような、よい姑になりたいと存じます」