轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

桃の井戸

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,620 字 · 26 页

青空文庫

そうでしょう。……これはわたくしが湖月亭の大人の「山の井」をまねてたわむれに「桃の井」とよんでいますが、眺めるだけで水は使いません、継しい仲を美しくしようとするあまり、水の使えない井戸ができあがってはたいへんです。これだけはよくよく注意すべきだと思います……」そのお譬えはいろいろな意味で私の心にふかく刻みつけられた。

武家の妻という生活についてはこと新らしく書くことはなにも無い。萩原は少しものたらぬほど寡黙なひとだというほかには、よき父親でありよき良人であって呉れた。おばあさまの仰有ったような飾りあげた夢をもっていなかった私にはかくべつ失望するようなこともなく、案外、平凡に家風に慣れていったようだ。ただいちどこんなことがあった。良人の左がわの耳のうしろに赤小豆ほどの疣がある。どういう機会にかそれをみつけてから気になってしかたがない。それで或るとき白茄子の蔕でこすると取れるということをそれとなく申上げた。二どか三どは申上げたろう。良人はただ聞きながしていらしったが、しまいに「切腹の邪魔にさえならなければ」と仰有ったきりとりあっては下さらなかった。侍のそういう厳しいお心構えは、侍の娘たる自分にはよくわかっていなければならない筈だったのに、これを軽率に云いだした自分の至らなさにひどくさびしくなったのを覚えている