轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
藪の蔭
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,841 字 · 25 页
ざわざわした人の出はいりや、輿入の荷をはこび込む物音など、気ぜわしいあたりのようすを由紀はじっと坐ったまま、綿帽子のなかでよその世界のことのように聞いていた。……どのくらいの時が経ってからだったろう、あたりの騒がしさが鎮まって、すべての物音がぴたりと停ったような一瞬、ふと「おそいな」という誰かの呟きが聞えた。誰かが立って部屋を出てゆき、母と頼母夫人とがなにか囁きあった。それで由紀は母親のそこにいることに気づき、急にその顔が見たいという衝動をはげしく感じた。間もなく、出ていった誰かが戻って来た。
「せんこく役所へ迎えを出したそうです」
「どうしたのだ」
頼母の声だった。
「なにか早急に御用の調べものができて退出がおくれる、然し六時までには必ず帰るという使いがあったそうですが、迎えを出したのですからもう戻ると思います」
「御用ではしかたがない」
父の声だった。
「たとえ親の臨終でも御用のうちは会いに戻れないのがさむらいのつとめだ、なに待つぶんには馬もいらぬさ」
そう云って父が笑うとすぐだった、なにやら険しい足音と、唯ならぬ人の叫びごえが聞えた。家じゅうの物音がいっぺんにとだえ、すべての人が息をひそめた。