轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にっき

日記

宮本 百合子

「文芸」1935(昭和10)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,083 字 · 7 页

青空文庫

束髪の鬢を乱して黒っぽいコートを着た四十がらみの大きい女がこのひとの伴れらしいが、そのひともショールをはずして膝の上へまるめこみ、沈んだ風で体をねじり、煉炭火鉢に両手をかざして、黙っている。

「サア……何か暖いものがいいでしょうが……」

主人は顔を下に向けゆっくりと毛筆を運びながら、応答している。

「やっぱり、外であがるようには行きませんでしてね」

「そうでしょうねエ」

感慨をこめて答えているが、その若い女のひとには、どんな風にそれが外で食べるようには行かないのか、はっきり、具体的に分っているのではないことが口調から感じられる。暫く沈黙がつづいたが、しまいにその女のひとは思案にあまって投げすてたというように、コートにつつんで立っている体を捩り、

「じゃ、何でもようございますわ、おみつくろい下されば……」と云った。

「お弁当をお入れしましょうか」

「ええ」主人は女のひとの方を見ないまま別の紙をひき出し、又その上に筆を動かしている。受取りをさし出されてガマ口を懐からとり出しながら、

「あのう――この次面会するときにも又こちらへおよりすれば、紙を書いていただけますか」