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にちろく

日録

山本 周五郎

「日本読書新聞」1961(昭和36)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,076 字 · 11 页

青空文庫

とどなり返した。「戦争をするのは軍隊じゃないか、あのB二十九の大編隊が襲いかかっているのに、昨日は高射砲もろくにうたず、戦闘機は一機も飛びゃしない、われわれは濡れ莚と火叩きしか持っちゃいないんだぜ、高射砲や戦闘機を抱えこんでいて、それを使いもしないで、一般国民の初期防火活動がよくないもくそもあるか、昨日やられた荏原町の一部は三度まで焼夷弾とたたかったんだ。しょせん濡れ莚と火叩きで、B二十九の大編隊といつまでたたかえますか、ばかなことを言いなさんな」F誌編集長は私のけんまくに吃驚したらしく、「尤も、尤も」と頷くだけであった。ジンジャー君も私のようにどなりだしたいのではないか、と思ったのだが、そこでまたふっと考えた。一般国民の防火活動をいましめた軍部の妄言は、いまなお、位置を替えてわれわれの上に振りおろされていはしないか。われわれから絞りあげた超巨額な税金を抱え、法と権力を両手に握った政府が、事毎に「国民諸君の自立心と政治への協力」という、砂糖の衣をかけた恫喝的要求をする。――無力なジンジャーの花に対して、「こんど颱風が来たらしっかり身を守れよ、海水を含んだ風ぐらいがなんだ、そんなことでいちいち他力を頼むようではたるんでるぞ、しっかりしろ」