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あすのじつりょくのために

明日の実力の為に

宮本 百合子

「日本学芸新聞」1940(昭和15)年10月25日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,166 字 · 3 页

青空文庫

このような例は過去の文化上の貴重な遺産の整理ということについて、決して笑話に終らない本質をもっていると思える。

ドイツでは、大層盛大なワグナア祭典が行われていたり、ゲーテやシラーについて政府としての評価が語られたりしているようだ。

文化に対する理解がそこにあるとされているが、そういう国では現在青年群に与える読みものとしてそういう古典を整頓しているほか、その青年たちが成人したときその世代の文化的創造力を溌溂旺盛ならしめるために、どんな独創の可能を培いつつあるのだろうか。

世界史が書きかえられている。そのことはまざまざと私たちの胸から指のさきまで脈をうって伝わっている。世界史がかきかわり、日本も世界史的規模で新たになってゆくという現実のよりどころは、文化に即して云えば窮極のところ次の世代の創造の可能力如何にかかっているのが事実である。

携帯口糧のように整理された文化の遺産は、時にとって運ぶに便利であろうけれども、骨格逞しく精神たかく、半野生的東洋に光を注ぐ未来の担いてを養うにはそれだけで十分とは云い切れまいと思える。

三代目ということは、日本の川柳で極めてリアルに抉って描写されているが、今から先の三代目という時代の日本というものを文化の面でも切実深甚に考慮しなければならないのだろうと思う。