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めいじのランプ
明治のランプ
宮本 百合子
「政界往来」1939(昭和14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,154 字 · 5 页
開発のことが終生頭についていた人であるから、金を蓄える方面は一向に駄目で、島根へ、役人として袴着一人をつれて行っていた暮しの間でも、米沢の家の近所のものには太政官札を行李につめて送ってよこすそうだと噂されつつ、内輪は大困窮。その頃の旧藩士と新政府とに対する微妙な感情から、政恒という人は政府から国のそとで貰う金は国のそとで使ってしまうべしという主義でいたのだそうだ。
そのときの役が参事司補。曾祖母と隣りの老人とが日向で話している。「今度のお役は何というお役むきでありますか」「参事司補であります」「ホウ、三里四方でありますか?」そういう対手も耳が遠いが曾祖母もやっぱり同様なので、おとなしく「ハイ、そうであります」と答えている。祖母にはそれがつくづくおかしかったと見え、ふざけることの下手な正直者であったが、切下髪を動して「ハイ、そうであります」という口真似から身ぶりまで実に堂に入っていて、私は大よろこびしたものである。
やがてゴリゴリする白縮緬の兵児帯などを袴着にまでしめさせて、祖父は一つのランプと一張りの繭紬の日傘とをもって国へ帰って来た。そのランプというものに燈を入れ、家内が揃ってそのまわりに坐っていると、玉蜀黍畑をこぎわけて「どっちだ」