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めいじのせんそうぶんがく
明治の戦争文学
黒島 伝治
「明治文学講座 第四巻」木星社、1932(昭和7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,887 字 · 24 页
岩野泡鳴には凱旋将軍を讃美した詩がある。
自然主義運動に対立して平行線的に進行をつゞけた写生派、余裕派、低徊派等の諸文学(夏目漱石などその門下、高浜虚子、長塚節、永井荷風、谷崎潤一郎等)については、森鴎外が、軍医総監であったことゝ、後に芥川龍之介が「将軍」を書いている以外、軍事的なものは見あたらない。たゞ、それらの文学と深い関係のある、或る意味ではその先覚者と目される正岡子規の、日清戦争に従軍した際の句に、
行かばわれ筆の花散る処まで
いくさかな、われもいでたつ花に剣
秋風の韓山敵の影もなし
等があるばかりである。
しかし、それは、この写生派、余裕派、低徊派等が戦争に対して反対であったからではなく、多くが無関心だったからである。自然主義文学が、資本主義的生産関係を反映し、あるがまゝに現実を描こうと企図したのに対して、この写生派、余裕派、低徊派等は支配階級の中に根強く巣喰っている封建主義を多分に反映して逃避的唯美的傾向に走っていた。それが、この派をして、社会的現実としての戦争から眼を蔽わしめたのである。
以上のほか、硯友社派、及び自然主義派の作家で、全然戦争のことには手を触れなかった若干がある。