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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

16 その十五 赤罠

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页

青空文庫

気をとり直して一枚ずつ扉を全開した。彼は一同に内部が見えるように、一足横に身をひいた。

棺桶の上に、黒装束の人が立っているのだ。火消装束の人である。立っている。棺桶の上に。直立して、生きているのだ。うごきはじめた。棺桶を降りて、一同の前まで進みでた。深く頭巾をたらしているから、かすかに目が見えるだけで、まったく人相は分らなかった。直立不動、無言のまま一同を見まわした。

新十郎は猛獣のオリの前で小学生の団体に説明する先生のように、

「私がここにチャンとこうして居りますように、私、つまり、あの日の不破喜兵衛さんも火消人足に変装して室内をでてから、再び室内へは戻りません。戻ることはできないのです。ヌケ道もなく、扉には錠がおろされているのですから」

新十郎は怪人同様一同を見廻して、

「だから中で焼死した人があるとすれば、とにかく喜兵衛さんでないことは確かです。そして喜兵衛さんと皆さんが室内から出て以来、扉には錠がおろされて誰も再びはいる姿がなかったとすれば、実に真相はカンタンです。どこにも謎や仕掛はあり得ません。要するにあの室内にはその前から死体があったのです。