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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

13 その十二 愚妖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 页

青空文庫

そこで谷へ通う方法を警戒もせずに語ってきかせた。

ナガレ目は人のねしずまる深夜に往復していた。ところがオタツは道のない山や谷をわたって昼でも人に知られず谷へ行くことができると云った。ナガレ目も同じことができるのだが、彼は牛をひいているから、なるべく深夜に平易な道をとったのである。

オタツが谷へ通うのは山の畑に山ごもりしているとき、そこから山づたいに誰にも知られず谷へ通うことができるのだ。

オタツは偶然ナガレ目のアルバイトを突きとめて、時々材木を運んでやるから運賃をよこせというのを口実にして、口止め料をかせいでいた。一回一円であるが、ナガレ目は炭の運送料から算定して一銭でタクサンだと云ったが、オタツは腕ップシが強大だし、意地ッぱりだし、秘密を握ってもいるから、時々一円まきあげにきた。その代り、大の男でも一人で担げない材木を三本ぐらいまとめて運んだ。それは親切のせいではなくて、そうしても苦にならないから、やってるだけのことであった。このことは二人だけの秘密であるから、二人が敵味方にわれて大論争になっても、二人とも警察で一言もこれにふれなかった。オタツも自分がたかっているのを言うわけにいかなかったのだ。