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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
小屋の住人はたいがい児玉郡の百姓だった人たちです。私も神の矢にかかった一人ですが、他の一人、神の矢で殺された今居定助の倅の伊之吉も数年前からここに小屋をたてて住んでおります」
これまた意外の話であった。神の矢にタタられた人々はおのずからタタリの神のお膝元に集らずに居られない気持が起るのであろうか。
「伊之吉には毎日お会いになりますか」
こう訊かれると、加治景村はニッコリ笑って、
「こういうところに住むような心を起す者どもですから、小屋の住人同士で世間なみに交際することは、まずないのです。仲間同士の仁義や礼儀はおのずから有りますが、交際は有り得ません。茶のみ話が好きな人や必要な人はこんなところに住みませんよ。食事の支度や不浄の用に立ったとき、たまにすれちがう住人同士で黙礼するぐらいのもので、私たち同士ではこんなにお喋りすることは殆どありませんよ。むしろ夜分に小屋の外から話しかける参詣の山人たちと話を交す方が私たちの用いる大部分の言葉と申してよろしいでしょう」
「神主さんは尊敬すべき人格の御方でしょうか」
「それは実に尊敬すべき御方です。己れの天職にあの方のように一途に没入できるものではありませんよ」