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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
新十郎は伊之吉を見つめた。伊之吉も新十郎を見つめていた。
「まだ明るいうちにお父さんは出かけたのかね」
「まだ薄明るい夕方でしたね。私は虫の知らせか歩き去るオヤジの後姿をかなり遠方へ去るまでボンヤリ見ていたんですよ。ちょうど今ごろの季節でしたよ。オヤジは確かに手ブラで家をでたのですが、死んでいたときには、クワもあったし、ガンドウもあったそうですね。チョウチンもあったそうです。そのチョウチンは持主の名が書かれていないチョウチンでしたが、田舎じゃア持主の名のないチョウチンは珍しい。クワだって普通は持主の焼判があるものだが、どの一ツにも持主の名がなかったそうだね。大人になるうちに、そんなことをふと考えるようになりましたよ」
伊之吉は侘びしそうな苦笑をもらしたが、
「ガンドウの灯もチョウチンの灯もローソクの燃えきらぬうちに消えていました。別にひッくり返っちゃいなかったそうだ。すると、死んだオヤジではない人が消したことになるらしいね。人の噂ではオヤジは黄金を掘りに行ったそうだが、ガンドウとチョウチンを二ツも用意しているくせに掘りだした物を運ぶための品物の用意がないのはウカツじゃありませんか。