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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
06 その五 万引家族
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,970 字 · 48 页
「午後三時には警察の者が参って、花田、野草両名を殺した犯人を捕えることになっております。ですが、それには玄関脇の応接間を拝借させていただくだけで沢山だろうと思います。私どもは無論のこと、警察の者も、再びこの土蔵の前へ立ち寄ることは有りますまい。奥様、末長く万引をお続けなさいませ。お嬢様が結婚あそばすと、一人分の食物から余裕を出すのは、ちょッと苦心なさいますなア。お気の毒ですが、花田、野草二人殺しの犯人一也さんは捕えなければなりますまい」
新十郎は二人をうながし、深い感動をこめて茫然と見送る二人の万引常習者をあとに、外へでた。
「母の心、母の苦心を知らなかった一也。彼も亦わが家の平和をまもろうとして、実はわが家の主護神まで殺してしまったのです。わが子にも隠しおかねばならなかった秘密があるために生じた悲しいカン違い、悲しい犠牲者というべきでしょうか」
新十郎は苦しげに呟いた。
★
「殺されたのが殺した奴で、死んだ奴は生きていたかい」
海舟は手際よくだまされたのが快よげに笑った。
「そうかい。新十郎は見て見ぬフリをしてやったのかい。今や天下にこの秘密を知る者は、新十郎、花廼屋に虎之介、ならびにこの海舟の四名だが、野草に代ってユスリを働きそうなのは……」