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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

彼の得意とする将棋や囲碁以上にこれは興味のあるものだった。どんな弱い敵に向っても、どんな優秀な立場にあっても、天運というものが思わざる邪魔をしないとも限らない、そこに自分の力量をだけ信用してはいられない投機的な不思議があるとともに、そうした場合自分の力量が、どれほどしなやかに機変に応じうるかを見きわめたい誘惑は大きかった。

渡瀬は説明を続けているうちに、だんだん一つの不安心な箇所に近づいていった。その個所を突破しさえすれば問題の解決は著しくはかどるのだ。そこにもう一度ぶつかって、それを征服してしまおうとの熱意がいよいよ燃えてきた。彼の眼の前で数字が堂々たる陣容を整えて展開した。それが罫紙の上をあるいは右に、あるいは左に、前後上下に働きはじめた。渡瀬は仕事たこのできた太い指の間にイーグル鉛筆を握って、数字と数字との間を縦横に駈けめぐった。しばらくの間鉛筆は紙の余白に細かい数字を連ねていたが、そして渡瀬は神文でも現われてくるのを見る人のように夢中で鉛筆のあとを追っていたが、やがて鉛筆ははたととまってしまった。その瞬間に渡瀬は眼がさめたようになって、今まで書き続けていたところを読み辿ってみた。