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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
すっかり冷えこんでしまいましたお蔭で……」
「ははん、先生、腹立ちまぎれに明日から俺を抛りだそうと考えているな。こりゃこうしちゃいられないぞ」……渡瀬の頭に咄嗟に浮んだのはこれだった。しかし彼は驚きはしなかった。彼にはこの危地から自分を救いだす方策はすぐにでき上っていた。彼は得意先を丸めこもうとする呉服屋のような意気で、ぴょこぴょこと頭を下げた。そのくせその言葉はずうずうしいまでに磊落だった。
「やあすみませんまったく。こちらに来るまでに計算はこのとおりやっておいて、結果が出るばかりになっていたのだから、すぐできるとたかをくくっていたんですが、……これで計算という奴は曲者ですからなあ。今日はそれじゃ僕は失敬して家でうんと考えてみます。作るくらいならあんまり不器用な……」
「そりゃそうですとも、作る以上は完全なものにしたいのは私も同じことじゃありますが、計算までここでやってるんじゃ、私は手持無沙汰で、まどろっこしくって困りますよ」
計算だって研究の一つだい。道具を家で研ぎすましておいて仕事場に来る大工があってたまるものか。いい加減な眼腐れ金をくれているのにつけあがって、我儘もほどほどにしろ。