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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

渡瀬は腹の中でこう思いながらも、顔つきにはその気配も見せなかった。

「じつは僕もこの仕事は早く片をつけたいんです。学校のラボラトリーでやっている実験ですが、五升芋(馬鈴薯の地方名)から立派なウ※スキーの採れる方法に成功しそうになっているんです。これがうまくゆきさえすれば、それもひとつ見ていただきたいと思っているもんだから……」

新らしがりと、好奇心と、慾との三調子で生きているような新井田氏にこれが訴えていかないはずがない。渡瀬は新井田氏の顔が、今までの冷やかにも倨傲な表情から、少し取り入るような――しかもその急激な変化に自分自身多少のうしろめたさを示さないではない――それに変っていくのを見てしすましたりと思った。

「それもまあそれでしょうがね。それにつけてもこっちの方を片づけていただかないじゃあね」

渋い顔には相違なかったが、それは喉の奥から手の出そうな渋い顔だった。発声蓄音機の方は成功したところが、そう需用のたくさんありそうなものではない。日本酒が高価になるばかりな時節に、ウ※スキーは当るに違いない。これは新井田氏がすぐ気のつきそうなことだ。ウ※スキーという新時代のものらしい名前そのものも、新井田氏には十分の誘惑になっているはずだ。