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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

彼が専門に研究している農政の講義などは、一日引籠って読書すれば、半月分の講義の材料ができるほど稀薄なものだった。自然科学の研究なども、プレパラートと見取り図とを作ることに彼は不器用だったが、それさえ除けば、あまり分りきった事実の排列にすぎなかった。応用農学は学というべきものではなかった。百姓のしていることに秩序を立てて、それに章節を加えたまでのものと思われた。語学だの数学だのという基礎学は、癇癪にさわるほど同級の者たちが呑込みがおそいのでただもどかしさをそそられるばかりだった。それゆえ彼は第一学期の試験が来るまで、じっと自分の家にいて養生をしながら過ごそうと思いついたのだ。しかしながらここも住みよい所ではなかった。あの父、あの母、あの弟。父は暇さえあれば母をつかまえて小言と自慢話ばかりしているし、弟は誰の神経でもいらだたせずにはおかないような鈍いしぶとさを臆面もなくはだけて、一日三界人々の侮蔑と嘆きとの種になっている。そしてその上に、健康を著しく損じて、自分でさえかなり我儘で気むずかしくなったと思うような清逸自身が加わるのだ。自分の家に帰ると、清逸は一人の高慢な無用の長物にすぎないのだ。