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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
純次は何事も知らぬげに寝つづけていた。
石油を母屋まで取りに行くにはいろいろの点で不都合だった。第一清逸は咳が襲ってきそうなのを恐れた。しかも今、清逸の頭の中には表現すべきものが群がり集まって、はけ口を求めながら眼まぐるしく渦を巻いているのだ。この機会を逸したならば、その思想のあるものは永遠に彼には帰ってこないかもしれないのだ。清逸は慌てて机の前に坐ってみたが、灯の寿命はもう五分とは保つように見えなかった。芯をねじり上げてみた。と、光のない真黄色な灯がきゅうに大きくなって、ホヤの内部を真黒にくすべながら、物の怪のように燃え立った。
もうだめだ。清逸は思いきって芯を下げてからホヤの口に気息をふきこんだ。ぶすぶすと臭い香いを立てて燃える丁子の紅い火だけを残して灯は消えてしまった。煙ったい暗黒の中に丁子だけがかっちりと燃え残っていた。絶望した清逸は憤りを胸に漲らしながら、それを睨みつけて坐りつづけていた。
「おい純次起きろ。起きるんだ、おい」
と清逸は弟の蒲団に手をかけてゆすぶった。しばらく何事も知らずにいた純次は気がつくといきなりがばと暗闇の中に跳び起きたらしかった。