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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

「純次」

返事がない。

「おい純次。お前母屋まで行って、ラムプの油をさしてこい」

「ラムプをどうする?」

「このラムプに石油をさしてくるんだ。行ってこい」

清逸は我れ知らず威丈け高になって、そう厳命した。

「お前、行ってくればいいでねえか」

薄ぼんやりと、しかもしぶとい声で純次がこう答えた。清逸は夜気に触れると咳が出るし、石油のありかもよく知らないから、行ってきてくれと頼むべきだったのだ。しかしそんなことをいうのはまどろしかった。

「ばか、手前は兄のいうことを聞け」

弟は何んとも答えなかった。少しばかりの沈黙が続いた。と思うと純次はいきなり立ち上って、清逸の方に近づくが早いか、拳を固めて清逸の頭から顔にかけてところきらわず続けさまになぐりつけた。それは思わず清逸をたじろがすほどの意外な素早さだった。

「出ていけ、これは俺の部屋だい。出ていかねばたたき殺すぞ」

やがて牛のうめき声のような口惜し泣きが、立ったままの純次の口からおめきだされた。

清逸は体じゅうがしびれるのを覚えて、俯向いたまま黙っているほかはなかった。

「出ていかねえか」

純次は泣きじゃくりの中から、こう叫んでいらだちきったように激しく地だんだを踏んだ。