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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

渡瀬さんに用心するより、あなたが真直な心をさえ持っていれば少しもこわいことはありませんよ。どんなことがあっても人様を疑うのはよくないものね。正しい心がけで、そのほかは神様におまかせしておけば安心です。……ではこれから出かけてきますからね、渡瀬さんがいらしったらよろしく」

こういい残して母はかいがいしく、雪のちらちら降る中を病家へと出かけていった。

母を送りだして茶の間に帰ったおぬいは、ストーヴに薪を入れ添えて、火口のところにこぼれ落ちた灰を掃除しながら時計を見るともう三時になっていた。部屋の中は綺麗に片づいていて、客を迎えるのに少しの手落ちもなかった。自分の身なりをも調べてみて、ふたたび机の前に坐ろうとした時、ふと母のいい残した言葉が気になった。渡瀬さんの来る時には今までいつでもおりよく母がいたのに今日は留守になるので、それであれだけのことをいいおいたのかと思えた。そう思ってみると、その言葉の一つ一つにはかりそめに聞き流してはいられないものがあるようだった。そういえば渡瀬さんという人は、星野さんや園さん、そのほか農学校にいる書生さんたちとは少し違ったところがある。