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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

「けれども、あの人にはちゃんと奥さんがあるんじゃありませんか」

「そ、それだが……先方では妻にくれろというのだから、今の細君をどうするとかこうするとかそれはむこうに思わくがあってのことに違いないとお父さんは思ってるがどうだ。何しろこっちは先方の言い分を信用して……」

おせいは惘れるばかりだった。父がどうしてこんなになったのか、どう思ってみようもなかった。いくらなんにも知らないおせいにも、自分のような貧乏な、無学な、知り合いもないような人間を正妻に迎えるわけがないのは分りきっているのに、しらじらしい顔つきをして、自分の娘をごまかそうとするらしい父が邪慳の鬼のようにも思えた。

「お前は何んでも世間の見るとおりに物を見ようとするからいけない。高利貸といえばすぐ鬼のような無慈悲な奴、妾を持つといえばすぐ※々のような淫乱者、そう頭から決めてかかるんだが、そういちがいにはいえるもんじゃない。何んでも浅田の話では、見たところは小作りな、あれが評判の梶という人かと思うほど物わかりのいいやさしい人だということだ。それが合田さんの所でお前を二度ほど見かけて、ぜひということになったものらしい。