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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
……園は上り框に腰をかけて、形の崩れた編上靴を脱ぎはじめた。
いつ来てみても園はこの家に女というものばかりを感じた。園の訪れる家庭という家庭にはもちろん女がいた。しかしそこには同時に男もいるのだ。けれどもおぬいさんは産婆を職業としているその母と二人だけで暮しているのだから。
客間をも居間をも兼ねた八畳は楕円形の感じを見る人に与えた。女の用心深さをもってもうストーヴが据えつけてあった。そしてそれが鉛墨でみごとに光っていた。柱のめくり暦は十月五日を示して、余白には、その日の用事が赤心の鉛筆で細かに記してあった。大きな字がお母さんで、小さな字がおぬいさんだということさえきちんと判っていた。部屋の中央にあるたものちゃぶ台には読みさしの英語の本が開いたまま伏せてあったが、その表紙には反物のたとう紙で綿密に上表紙がかけてあった。男である園は、その部屋の中では異邦人であることをいつでも感じないではいられなかった。
けれどもその感じは彼を不愉快にしないばかりでなく、反対に彼を慰めた。ただ若いおぬいさんが普通の処女であったなら、その処女と二人でさし向いに永く坐っているということは、園には自分の性癖から堪えがたいことだったろう。