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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

した気持を味わねばならなかった。園が黙ったままお辞儀一つして、それに手を延ばすまでの一挙一動はもとより、どういう風に気持が動いているかを厳しく看守しながら、いささかでも父の権威を冒すような風があったら、そのままにはしておかないぞというように見えた父の顔……自分の生みの父ながら、あの眉の上の深い横皺は園にはこの上なくいやなものだった。どうかして鏡に向うようなことのあるたびごとに、園は自分の顔にそれが現われではしないかと神経質に注意した。年のせいか園にはなかった。しかし兄には明かにそれが出ていた。そういう父の顔……それが何よりも色濃く園の眼の前を離れなかった。死顔などはどうしても現われては来なかった。父の死んだということが第一不思議なほど信ぜられなかった。毎日葬式や命日というような儀式は見慣れてきてはいたけれども、自分の家から死者の出たのは、園が生まれてから始めてのことなので、よけいそうした感じが起らないのかもしれなかった。母の顔も平生のとおりの母の顔、兄の顔も今年の夏別れる時に見たままの兄の顔。玄関からなだら上りになった所に、重い瓦を乗せてゆがみかかった寺門がある。