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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

た。

清逸は小学校の三年を卒業する時から、自分は優れた天分を持って生れた人間だとの自覚を持ちはじめたことを記憶している。田舎の小学校のことだから、卒業式の時には尋常三年でも事々しい答辞を級の代表生に朗読させるのが常だった。その時その役に当ったのは加藤という少年だったが清逸は加藤の依頼に応じて答辞の文案を作ってやった。受持教員はそれを読んで仰天した。そしてそれが当日郡長や、孵化場長や、郡農会の会長やの列座の前で読み上げられた時、清逸は自分の席からその人たちが苦々しい顔をして聞いているのを観察した。彼らのすべては、その答辞が、教師の代作でなければ、剽竊に相違ないと信じきっているのが清逸にはよく知れた。清逸はその時子供らしい誇りは感じなかった。ただ、一般に偉い人といわれる人が、かならずしも偉いというほどの人ではないとはっきり感じたのだった。偉人として、人の称讃を受けるくらいのことはそうむずかしいことではないとはっきり感じたのだった。それ以来清逸の自分に対する評価は渝ることがない。そしてそれに特別の誇りを感じないのもまた同じだった。この心持がすべての思想と行動を支配した。