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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

そう思うと柿江は自分というものがめちゃくちゃになってしまったのを感じた。そういえばかんかんと日の高くなった時分に、その家の閾を跨いで戸外に出る時のいうに言われない焦躁がまのあたりのように柿江の心に甦った。

それでも柿江の足は依然として行くべき方に歩いていた。いつの間にか彼は遊廓の南側まで歩いてきていた。往来の少ない通りなので、そこには枯れ枯れになった苜蓿が一面に生えていて、遊廓との界に一間ほどの溝のある九間道路が淋しく西に走っていた。そこを曲りさえすれば、鼻をつままれそうな暗さだから、人に見尤められる心配はさらになかった。柿江は眼まぐろしく自分の前後を窺っておいて、飛びこむようにその道路へと折れ曲った。溜息がひとりでに腹の底から湧いてでた。

何、かまうものか。ガンベは日ごろからちゃらっぽこばかりいっている男だから、あいつが何んといったって、俺がそんなことをしたと信ずる奴はなかろう。もしガンベが何か言いだしたら俺はそうだガンベのいうとおり昨夕薄野に行って女郎というものと始めて寝てみたと逆襲してやるだけのことだ。それを信ずる奴があったら「へえ柿江がかい」