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えいがかいてぢかのもんだい

映画界手近の問題

伊丹 万作

「改造」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,970 字 · 16 页

青空文庫

それでも彼らは何もいわない。映画従業員はこれほどおとなしいのである。

まだある。

映画会社には最低給料に関する規定がない。したがって映画従業員の月給は上は数千金から下は無給の例さえあるのである。

映画会社には恩給制度、退職手当に関する制度がほとんど行なわれていない。年功による昇給に関する確然たる規定がない。賞与に関する規定がない。

規定がないということは、つまり実質的にもそういうものが存在しないことを意味する。

なぜならば会社は規定にないことまでは決して実行しないから。

つまり映画会社は従業員の生活の保障に対して具体的には何らの関心をも示していないのである。

いいかえるならば、映画会社はまだ世間並の企業会社として一応の形態を備えていないのである。かかる場所で働いている従業員の不安を考えてみるがよい。

彼らはなるほど会社間を転々する。なぜならばそれ以外に昇給の方法を知らないから。

彼らは盛んに会社から借金をする。なぜならば彼らにはほとんど賞与というものがないから。

また俳優などは入社に際してよく一時金というものを取る。なぜならば彼らには退職手当というものがないから。