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えいがざっかん(に)
映画雑感(Ⅱ)
寺田 寅彦
「帝国大学新聞」1933(昭和8)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,516 字 · 11 页
しかしそういう劇的な脚色の問題とは離れて、前記の「実験」の意味からいうと、本筋のストーリーよりもあのおおぜいの女学生の集団の中に現われる若いドイツ女性のケックハイト、デルブハイトといったようなものの描写の中に若干の真実の表現があるようで、見方によってはむしろそのほうに興味を引かれ同時にいろいろの問題を暗示されるようである。
不自然な世界の中での自然な現象としては舎監やその助手のばあさんがある。自分の目にはこの二人のばあさんがもっとも理解しやすい「定型」として現われる。この二人の憎まれ役は、おそらく見ようによってはもっとも善良なる旧時代の残存者である。これに反してもっともわかりにくい存在はこの若く美しい生徒に慕われる女教師である。ひどく骨っぽく冷たいようにも見え、またひどく情熱的魅惑的にも見える。どこかブリギッテ・ヘルムに似たところのあるこの役者のこの配役にはなんとなくダヴィンチのモナリザを思わせる不可思議なものがある。少女マヌエラのほうは、理性よりも、情緒の勝った子供らしい、そうしてなんとなく夢を見ているような目と、なんとなくしまりの悪い口元のあたりにセンシュアルな影がある。