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えいがざっかん(に)

映画雑感(Ⅱ)

寺田 寅彦

「帝国大学新聞」1933(昭和8)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,516 字 · 11 页

青空文庫

それがこの劇の心理的内容を複雑にするに有効であるように見える。

「ひとで」

この映画と同時に有名なマン・レイの「海翻車」を見た。全体としては、正直にいって決して「おもしろい」ものではない。しかし、なにかしら、ほんとうにおもしろいものへの第一歩でありおぼつかない試みであるとはたしかに思われるものである。これはロベール・デスノという人の原詩を脚色したものだそうであるから、原詩をよく味わった人にはあるいはいくらかおもしろいかもしれないが、われわれにはそんな知らない原詩のある事がかえって鑑賞の邪魔になっているわけである。これで思い出すのは、いつかウーファの教育映画で本物の生きた「ひとで」のきわめて鮮明な大写しを見た、その「科学的なひとで」のほうにかえってはるかに美しく真実な詩があった。マン・レイの「ひとで」の中にも少しばかりこれに似た実写が插入されているが、前者とは比較にならぬほど美しからぬものに見えた。この「ひとで」はあまりに細工が過ぎているように思われる。もう少し自然な真実なものの適当な理解ある編集によって、もっともっと美しい詩が構成されてもいいはずである。