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えいがざっかん(に)

映画雑感(Ⅱ)

寺田 寅彦

「帝国大学新聞」1933(昭和8)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,516 字 · 11 页

青空文庫

真実でないものをいくらどう並べてみたところで美しくなりようがないと思うのである。

「貝がらと僧侶」もはなはだ不愉快な映画であった。脚色者があさはかな人間の知恵をもてあそぶに忙しいだけで、科学的に真実な、万人を無条件に納得させるような何物をも含んでいないからである。

「パリ―ベルリン」

これに反して「パリ―ベルリン」と名づけるナンセンス映画は近ごろ見たうちで比較的おもしろい愉快なものであった。もちろん、話の筋や役者の芸などは初めから問題にはならない。おもしろいのは主として編集の技巧から来る呼吸のおもしろさであると思う。たとえば拍手している多数の手がスクリーンの上に対角線状に並んで映る。それ自身としてはくだらないものである。これが插入の呼吸で実に不思議なおもしろいものに見えるのである。それからもう一つのおもしろみの原因は登場するキャストの選定によって現わされた人間の定型の真実さにある。たとえば友だちの名をかたってパリへ出かけるいたずら者が、自分の引き立て役に純ドイツ型の椋鳥を連れて行く、その椋鳥のタイプとか、パリ遊覧自動車の運転手とか案内者とか、ベデカと首っ引きで、シャンゼリゼーをシャンセライズと発音する英国老人とかいうのがそれである。