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はるさきのこぶつてん
春さきの古物店
小川 未明
「赤い鳥」1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,911 字 · 8 页
なぜなら机の四つ角は、小刀かなにかで、不格好に削り落とされて円くされ、そして、面には、縦横に傷がついていたのであります。張り板がその過去に、どんなひどいめにあわされてきたかと疑ったことに、すこしのふしぎもなかったからです。しかし、机はそのことについて語りはじめました。
「もと私は、なかなかりっぱな机でした。その時分、お嬢さまは、私の前にすわって、歌をお作りなされました。お嬢さまは、夏の山路という題について、秋の野原という課題について、虫や、露について、また雨にぬれた花などについて、どんなにかぎりない美しい空想を、私の前で読み、歌われたかしれません。そして、あるときは故郷を思い出しては、悲しいやるせない、それは、私には、あまり微妙でいいあらわせないような、もっとも尊重されなければならぬ感情を、私にばかり、惜しげもなく見せられたかしれません……。このことは、あなたたちには、まったく、想像のつかないことです。」といいました。
「それだのに、なぜ君は、そんなかたわ者にされたんだね。」
「まあ、聞いてください。お嬢さまが結婚なされたときに、私もいっしょに、お伴をしてまいりました。