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はるになるぜんや
春になる前夜
小川 未明
「東京日日新聞」1922(大正11)年1月7日~10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页
それを聞くのがたのしいことだ。」と、この山のふもとに生まれて、この野原と、林としかほかのところは知らないすずめは、せめて他国の鳥の唄を聞くことを幸福に思っていたのです。
すると、ある暖かな晩に、すずめは野原の中から、笛の音と、胡弓の音と、悲しい唄の声を聞きました。すずめは、それを聞くとびっくりしました。いつかの哀れな旅楽師を思い出したからです。
いままで、その野原の中に凍っていた、それらの音色が、南の風に解けて、流れ出したものと思われます。しかし、その人たちの死骸は、飢えたおおかみやくまに食べられたか、見つかりませんでした。ただ、この物悲しい音色は、風に送られて、その後、幾夜も、この広野の空を漂っていたのです。