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しょうわのじゅうよねんかん
昭和の十四年間
宮本 百合子
「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,356 字 · 69 页
従って当時の大衆は、玄人の書いた作品を買って読む文学の消費者として存在していなかった。文学の生れる広い、深い歴史的な地盤としてあったから、大衆の中からの文学的萌芽というものは実に盛んに芽生えた。今日も、文学作品は非常な売行きを見せているが、そこでの大衆は購買力を持ったものという意味で客観的には現れているに過ぎない。自身の文学を作ってはいない。
文学に於けるこの問題はいずれ後段に触れられることだと思うが、当時のこの機運は、例えば婦人作家の誕生にも影響した。それまでの婦人作家が概して有産的な環境の中から生れ出ているに対して、この時代の潮は勤労的な生活の中から婦人作家を誘い出して、窪川稲子の「キャラメル工場から」等はその代表的なものだと思う。
そのような文学の動きは、新しい社会的な素地から作家と作品を成長させて来たばかりでなく、当時既に作家としてある程度の活動と業績を重ねた作家たちをも、各自の角度に従ってこの文学運動の中に引き入れた。先に触れた藤森成吉、秋田雨雀のほか片岡鉄兵はかつて属していた「新感覚派」から転じて「綾里村快挙録」を、細田民樹は大衆的作家の傾向を持ちつつ「真理の春」