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しょうわのじゅうよねんかん
昭和の十四年間
宮本 百合子
「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,356 字 · 69 页
独自の文芸理論もないために、その能動性は作品の現実では、素朴な行動性の方向をとらざるを得ず、その行動も社会的な客観性を避けているためにつまりは在り来った両性関係のうちに表現された。而も、両性関係における行動性というものも、本質に於ては日本旧来の男の恋愛行動のままの延長であったことは我々を深く考えさせる点であると思う。
能動精神という声はフランスにも日本にも聞えており、何か文化の希望を約束するかのようではあったが、現実のあらわれでフランスと日本とは全く異った結果をもたらした。
日本文学に響いた能動精神は、社会的行動の面で一貫性をもち得ない必然をはらんでいたこと、従って文学として理論をも持ちかねたことから幾何もなく『行動』も廃刊となって、その標語は文学におけるヒューマニズムという広汎な野づらへ押し出されたのであった。
考えてみれば、人類の文学の歴史の中にこのヒューマニズムという声は幾たびか意味深くくり返えされて来ている。ヒューマニズムという言葉をきいた時、誰の胸にも浮ぶのはヨーロッパ文化に於ける文芸復興時代のヒューマニズムの多彩な開花であろう。ルネッサンスは中世の思想と社会が人間に強制していた種々の軛からの人間性の解放を叫んで、社会文化の各方面に驚くべき躍進を遂げた時代であった。