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じげんばくだんきたん
時限爆弾奇譚
海野 十三
――金博士シリーズ・8――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页
そうだ。時局柄、贅沢はいわないことじゃ。それにしても、あの秘書め、何をぐずぐずしているのじゃろう」
カーテンの向うから、秘書の咳き払いが聞えた。
「おほん、食事の御用意が整いましてございます」
「おお、待ちかねた。今、そこへ行くぞ」
食事の用意が出来たと聞いた途端に、博士はまるで条件反射の実験台の犬のように、どうと口中に湧き出でた唾液を持てあましながら、半ば夢中になって隣室へ駆け込んだ。
「いやあ、これは偉大だなあ!」
卓子に並べられた大皿を見て、博士はまず驚嘆の声を放った。そうでもあろう。胴のまわり一米三、厚さ十糎というでかい蟒の胴を輪切りにした燻製が、常例ビフテキに使っていた特大皿から、はみ出しそうになっているのである。
博士は、椅子にかけるのも待ち遠しく、ナイフとフォークとを取り上げて皿の中をのぞきこみながら、
「うふふん。どうもこの燻製の肉の色がすこし気に入らぬわい。こんなに黝んでいるやつは、肉が硬くていかん。こいつはきっと、煙っぽくて、喰っている間に、咽喉加答児を起こすかもしれんぞ」
こと燻製ものについては、博士は仲々くわしいのであった。
ちゃりんちゃりんナイフを磨ぐ音がした。