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じげんばくだんきたん
時限爆弾奇譚
海野 十三
――金博士シリーズ・8――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页
この群衆を引受けようものなら、博士はぺちゃんこになってしまったかもしれないのである。
「やあ、皆、こっちへ戻れ、不発弾が、なに恐ろしい、戻れというのに……」
と、エディ・ホテルの前で、不発論を守って、逃げ行く不甲斐なき民衆を呼び戻しているのは例の咄々先生であった。
「おい、皆よく聞け。五時間や十時間先に爆発する時限爆弾ならいざ知らぬこと、一体、十五年間も先に爆発するなんてそんな、べら棒なものがあってたまるものか。十五年すれば缶詰だってくさる頃だよ。ましてや金博士の手製になるあやしき爆弾が、十五年間もじっと正しき時を刻んで、正確なる爆発を……」
残念ながら、咄々先生の言葉は、これ以上録音することが不可能の事態とは相成った。なぜなれば、咄々先生の舌が、一抹の煙と化してしまったからである。もちろん舌ばかりではない、咄々先生の躯ごと煙となって、空中に飛散してしまったのであった。咄々先生が背にしていた礎石は、正直に大爆発を遂げたのであった。時刻は正に二十六日の午前九時三十分――いや、こんな時刻のことなんか、読者には一向興味のないことであろう。それよりは、その礎石の爆発に端を発して、かの二十五階の摩天閣たるエディ・ホテルが安定を失って、ぐらぐらと傾き始めたかと思うと、地軸が裂けるような一大音響をたててとうとう横たおしに