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ばんか
晩夏
堀 辰雄
「婦人公論」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,249 字 · 27 页
「ボンファイアって何だい?」私はそういう妻から努めて話を引き出すように訊いた。
「まあ、ボンファイアを知っていらっしゃらなかったの? 呆れたわね。」妻は少しはしゃいでいた。「夕方になってから、みんなで焚火をしてね、そのまわりで最初はお祈りをしたり、讃美歌を唄ったりして、礼拝をするのよ。――それが終ると、ソオセエジを串焼きにして麺麭にはさんで食べたりしながら、その焚火のまわりで踊ったりなんかして遊ぶんだわ。素敵だわよ。……」
私は少してれ臭そうに聞きながら、最後に言った。「ふん、ソオセエジをその焚火で串焼きにして食べるのかい? それは好いなあ。」
が、私の心の裡に、こういう山に囲まれた湖畔で、そんな焚火を背景にして、大勢の若い娘たちが生の悦びに充ち溢れながら遊び戯れる光景を、殆ど眼底にしみつくように、鮮かに浮ばせた。
妻はそこに落ちていた燃え残りの薪を拾って、湖水の方へほうった。それは水まで届かないで砂地に落ちた、引汐時だったので、水はずっと向うまで引いていたのだった。
私もその真似をしようとした。自分なら湖水まで楽に届かせて見せると思ったが、途中で急に気がついて薪を棄てた。