轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ばんきく

晩菊

林 芙美子

「別冊文藝春秋」文藝春秋、1948(昭和23)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,998 字 · 32 页

青空文庫

きんも熱海の別荘を売った。手取り三十万近い金がはいると、その金でぼろ家を買っては手入れをして三、四倍には売った。きんは、金にあわてると云う事をしなかった。金銭と云うものは、あわてさえしなければすくすくと雪だるまのようにふくらんでくれる利徳のあるものだと云う事を長年の修業で心得ていた。高利よりは安い利まわりで固い担保を取って人にも貸した。戦争以来、銀行をあまり信用しなくなったきんは、なるべく金を外へまわした。農家のように家へ積んで置く愚もしなかった。その使いにはすみ子の良人の浩義を使った。幾割かの謝礼を払えば、人は小気味よく働いてくれるものだと云う事もきんは知っていた。女中との二人住いで、四間ばかりの家うちは、外見には淋しかったのだけれども、きんは少しも淋しくもなかったし、外出ぎらいであってみれば、二人暮しを不自由とも思わなかった。泥棒の要心には犬を飼う事よりも、戸締りを固くすると云う事を信用していて、何処の家よりもきんの家は戸締りがよかった。女中は唖なので、どんな男が尋ねて来ても他人に聞かれる心配はない。その癖きんは、時々、むごたらしい殺され方をしそうな自分の運命を時々空想する時があった。