轻松读懂日语经典作品
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くらがりのおとまつ
暗がりの乙松
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,992 字 · 25 页
もしや他へ納い忘れはしなかったか、箪笥の中は? 手文庫は?――しかしどこからも金は出てこなかった。上り框へ来て、ふと気付く板敷に歴々と残る草履の足跡、
「泥棒だ、泥棒が入っただ」
嘉兵衛は嗄れ声で娘のほうへ振返る、「お稲、おめえ家を明けやしなかったか」
「……でも、ほんのちょっくらだに」
「明けたか、家を明けただか、おめえ家を空っぽにしただか、お稲!」
「か、勘忍してくろ父さん、おら、おら、ほんのそこまで茂吉さを送って行っただけだに、ほんのちょっくら――」
「何がちょっくらだ、お稲、おめえ――姉さはじめおらやおっ母あを殺しちまっただぞ」
「お父つぁん」
お稲はわっとそこへ泣崩れた。
野村屋の手代は、このようすをさっきから見やっていたが、やがて一度消した提燈へ灯を入れて起上った。
「お取込みのようですが、約束の物は返していただけますかね」
「ああ野村屋さん……」
嘉兵衛はどかりと坐った、「今お聞きのとおりじゃ、娘を売って拵えた二百両の金を、たった今の間に盗まれてしまいましただ、そちらへお返し申す金どころか、親娘三人――明日から生きる方途さえ失くしてしめえました」
「そりゃあどうも」