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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

そして、これは今までにない重大任務だと思った。

「じゃあ、いつからあの城塞へ入り込むつもりかね」

と、私が訊くと、白木はどうしたわけか、唇まで持っていった盃を呑みもせずに下に置いて、大きく溜息をついて、

「明日だ。ひょっとしたら、遅すぎるかもしれないが、明日にしよう。今日いくのは危険だ」

といって、何をか考え込む様子だった。

城塞見物

その夜は、娘さんたちに約束のとおり、白木はホテルの広間を借りきって、豪華なダンスの会を催した。

その盛会だったことは、呆れるばかりで、白木は始終鼻をうごめかしながら、溌剌たるお嬢さんや、小皺のある夫人たちに、あっちへ引張られ、こっちへ引張られして、もみくちゃにされていた。あとから白木の弁解するところによると、これも重要なる作戦の一つで、われらの旅行目的をカムフラージュし、且つはメントール侯の日常を知っている娘さんたちを味方につけて、翌日以後大いに利用しようという魂胆だったということである。

さて、その翌朝とはなった。

私たちは、軽装して、宿を出た。物好きに城塞見物をやって楽しもうという腹に見せかけ、ホテルのボーイに充分の御馳走や酒類を用意させて、お伴について来させる。