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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

「冗談じゃない。今部屋をぐるっと見廻したばかりだ」

「炯眼な探偵は、さっと見廻しただけで、宝でも何でも、欲しいものを探しあてるのだけれど……」

「じゃあ、君がそれをやればいい」

「いや、今度ばかりは、おれは駄目さ。始めからそう思っていたし、それにこの部屋を一目見て断念したよ。おれには科学は苦手さ。君に万事を頼む」と、いつになく白木は、あっさり匙をなげて、窓のところへいった。

「頼まれても困るが……」

「おい、また敗戦主義か。それだけはよして貰いたいね」

「そうだったな。よろしい、一つ大胆な仮説を立てて、そこから入り込むことにしよう」

私は、腕を組んで、改めて室内を見渡した。

「ええと、メントール侯が、充分安心して暗号簿をこの部屋に隠しているとしよう。すると、どんなところが安心のできる場所だろうか」

「おい、早くやってくれ」

「まあ、そうあわてるな」

「あわてはせんが、無駄に時間をつぶすな」

「ふーん、やっぱりあの蓄音機らしいぞ」

私は、この部屋に於ける唯一の目ざわりな新時代の道具として、さっきから卓子の上の蓄音機に目をつけていた。そこで私は、傍へよって、蓋をあけた。

「おお」