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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

に……と調べていったが、私は大きな失望にぶつかった。期待していた最後の二枚にも、遂に何の異状もなかった。暗号らしいものの隠されている徴候は、一向発見されなかったのである。

「そんな筈はないんだが……もし、蓄音機が暗号に無関係だとすると、これはもう簡単に手懸りを発見することは不可能だ」私は失望して、白木の方を見た。

白木は、はっと身をひいて、壁にぴたりと身体をつけた。又銃声と共に、彼の傍の窓硝子が水のように飛び散った。

と、こんどは白木がひらりと身を翻して床の上に腹匐いになると、例の機銃を肩にあてて遂に銃声はげしく撃ちだした。私の身体は、びーんと硬直した。

「おい、まだかね、まだ発見できないか」

白木は叫ぶ。私は、はっと吾れに戻った。

「うん……もうすこしだ。頑張っていてくれ」

私は、心ならずも嘘をつかねばならなかった。私は全身に熱い汗をかいた。ここですべてを諦めてしまえば、これまでここに入りこんだヘボ密偵と同じことになる。私の頭の中には、蓄音機や音盤やモールス符号やメントール侯爵の顔や島の娘の顔が、走馬灯のようにぐるぐると廻る。

「何かあるにちがいないのだが……」