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あんごうレコードじけん
暗号音盤事件
海野 十三
「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页
非常に高い音の出るあの音叉は、侯が私たちと話をなさるときには、いつも手にして玩具のように弄びながら、ぴーんと高い音をたてられるのが例だった。しかし、あの最後の夜には、それもなかったのですよ。――侯があの音叉をお鳴らしになるのはどういうわけですかな、お嬢さんたちはそれを御存知?」
話が妙な方向にそれた。私は音叉の話など初耳だ。白木先生の意図をはかりかねながら、私は黙ってこの対話に耳を傾けていた。
「侯爵さまは、いい声の人を探し出すために、ああしてたえず音叉を鳴らして、話し相手の声をおしらべになっていたんですって、そんな話を、お聞きになりません?」
「私たちは、お嬢さんがたほど信用がなかったのか、それとも私に音楽の素養がないと思ってか、侯は私たちには、そんな話をしませんでしたね。いつもする話は、酒とそして……いや、よしましょう、そんな話は。で、音叉を鳴らすと、なぜ声のいい人だということが分るのですか」
「さあ、それは、その人の声と音叉の音とがからみあって第三の声が聞えるんだそうですわ。それはその第三の声は侯爵さまだけに聞える音で、他の平民どもには聞えない音なんですって。