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あんごうレコードじけん
暗号音盤事件
海野 十三
「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页
「私に聴かせるためというと……」
「音楽の学問なんか、おれには分らないのさ。ぜひとも君に聴いておいて貰って、これからわれわれの取り懸ろうという仕事の手がかりにして貰いたかったわけだよ」
「これから取り懸るという仕事とは、ゼルシーの廃墟をたずねて、何か宝物でも掘りだすのかね」
「うん、宝探しにはちがいないが、困ったことに、その宝の形が一向はっきりしないのさ。とにかくそれは、イギリス政府が英本土を捨てて都落ちをする際、使用することになっている暗号の鍵なんだ。それが、あのゼルシー城塞のどこかに隠されているのだ。われわれは、それを探し出すために、この島までやってきたのだ」
白木は、このときようやく、この島にやってきた事情を、はっきり物語った。
暗号の鍵を探しあてるためだという。その暗号の鍵とはどんな形のものであるか。暗号帖のようなものか、それともタイプライターのように器械になったものか、或いは又別な形式のものであろうか。
このいずれであるかについて、白木自身は、全く何にも分っていないらしい。島の娘をつかまえて、メントール候の話に花を咲かせたのも、実は私に、探査の手懸りを掴ませるためだったというのだ。