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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

その話を綜合するとかようである。

たしか昨夜の九時前後と思われる頃であった。黒い大きな帽子を冠って、濃い藍色の洋服を着た日本婦人で、二十五から三十位の間に見える素敵な別嬪がやって来て、現在私が腰かけているこの卓子を借り切って、小さな本をひねくりながら折々窓の外を見て、人を待っている風情であった。その時はちょうど客足が途絶えていたが、それでも二三組客が居て、皆その別嬪の方を見てひそひそ話をしたり笑ったりしていた。この家の料理番で好色漢の支那人が、別嬪と聞いてわざわざ覗きに上って来た位、美しいのであった。

すると、それから十四五分ばかりして一人の色の黒い、大きな男が、濃い茶色の外套に緑色の帽子を冠って、両手をポケットに突込んだまま、跫音高く階段を上って来た。この男は一週間ばかり前からちょいちょい此店へ来て飯を喰ったり酒を飲んだりする男で、お金もたんまり持っているらしく、此店に来る客人の中では上々の部であった。その男は女を見ると横柄にうなずいて向側の椅子に腰を卸して大きな声でボーイに命じた。

「豆スープとハムエッグスと黒麺麭と、珈琲にウイスキーを入れて持って来い」