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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
けれども僕は我慢して頭を下げながら……へい。只今……と云ってこっちへ持って来ちゃったんです」
「顔は記憶えているかね」
「みんなは知りませんが、そう云った奴の面付だけは記憶えています。色の黒い、痘痕のある、瘠せこけた拙い面でした。朝鮮人かも知れません」
「ほかに特徴はなかったかね」
「さあ。気が付きませんでした。薄汚ない茶色の襟巻をしておりましたが」
「着物は……」
「三人とも長いマントを着ておりましたから解りません」
「下駄を穿いてたかね」
「靴だったようです」
「フーム。元来この店には朝鮮人が来るかね」
「よっぽど金持か何かでないと来ません。留学生はみんな吝ですから……女が居れば別ですけど……」
「ふふん。その連中の註文は……」
「珈琲だけです。何でも洋装の女より十分間ばかり前に来て、三人でちびちび珈琲を舐ていたようです。客が多ければ追い返してやるんでしたけど……それから女が出て行くと直ぐあとから引き上げて行きました。癪に障るから後姿を睨み付けてやりましたら、その痘痕面の奴がひょいと降り口で振り返った拍子に私の顔を見ると、慌てて逃げるように降りて行きました」
「ハハハハ。