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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
と叱責され謝罪して帰りたる由。因みに、その時同人は新しき革足袋を穿き、古きメルトン製の釜形帽を冠りおりたる由……おわり……」
「それだけかね」
「それだけです。あ……丁度志免警部が帰って来ました」
「電話に出してくれ給え」
「アアモシモシモシモシ」
疑いもない志免警部の声であるが、どうしたものかすっかり涸れてしまっている。
「モシモシ。課長殿ですか。課長殿ですか」
「どうしたんだ君は……僕だよ……狭山だよ」
「女の手がかりが付きました」
これだけ云って志免警部は息を継いだ。
「どうして……どこで……」
と私は態と落着いて云った。志免警部は水か何か飲んでいるらしく頻りに咽る音が聞えたがその間私は黙って待っていた。
「モシモシ。モシモシ。時間ですよ」
と交換手の声が聞えて来た。私は又五銭白銅を穴の中へ入れた。その音の消えない中に志免警部は口を利き出したがもうぐっと落ち着いている。
「……や……失礼しました。あまり急いだものですから息が切れて」
「どうしたというのだ」
「タクシーで逃げるのを自転車で追かけたのです」
「逃がしたのか」
「逃がしましたがその自動車の運転手が帰って来たのを押えて何もかも聞きました」