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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

「御苦労御苦労……手配はしてあるね……」

「ハイ。それから熱海検事が今総監室に来ておられます。一緒に来られるそうです」

「検事なんか何になるものか。自動車はいるね」

「ハイ。皆出切っておりますから呼んでいるところです。……実は女の隠家を包囲したいと思うんですが、十四五名出してはいけませんか」

「いけない。眼に立ってはいけない。国際問題になる虞れがある」

「今どこにお出ですか」

「日比谷だ」

「それじゃお迎えにやります」

「来なくていい。そこまでなら電車の方が早い」

日比谷公園の正門を駈け出すと、全速力の電車に飛び乗った私は五分も経たないうちに警視庁の前で飛降りた。その姿を見ると志免警部は表の階段を降りて迎えに来たが、そのあとから選りに選った強力犯専門ともいうべき屈強の刑事が三名と、その上に熱海検事、古木書記までも出かける準備をして降りて来た。ちょっと眼に立たないが、近来にない目の積んだ顔揃いで、早くも事件の容易ならぬ内容を察した志免警部の機敏さがわかる。おまけにどこをどう胡麻化したか新聞記者が一人も居ない。これだけの顔が出かけるとなれば、すぐに新聞記者の包囲攻撃を受けなければならないのだが……と……そう気が付いてキョロキョロしている私の腕を捉えて志免警部はぐんぐん数寄屋橋の方へ引っぱって行きながら、耳へ口を寄せるように