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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

と二人は矢張り同時に叫んだ。声に応じて三人の刑事は一斉に表に飛び出したが間に合わなかった。

二人が叫んだその一刹那にスターターを踏んだ三五八八の幌自動車は、忽ち猛然たる音を立てて四谷見附の方向に消え去った。……それとばかりに志免と三人の刑事が、素早く熱海検事の乗って来た箱自動車に飛び込んで追跡したが、あとを見送った私は苦笑しいしい頭を左右に振った。

「駄目駄目。もう少し早く気が付いたら……」

「どうしてあの運転手が怪しい事が、おわかりになりましたか」

と熱海検事も心持ち微笑を含んで尋ねた。

「初めから怪しい事がわかっていたのです。けれども途中で怪しくなくなったのです。ところが手紙を読んでしまうと同時に、又怪しくなって来たのです」

「……と仰言ると……」

と流石の熱海検事も私の言葉に興味を感じたらしく眼を光らした。私はポケットから暗号入りの聖書を引き出して、検事の前に差し出して見せながら説明した。

「何。訳もない事です。私はこの聖書をカフェー・ユートピアで手に入れたのです。樫尾初蔵から志村のぶ子に送った暗号入りのもので、暗号の最後がかしをとなっておるものです。