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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
私は思わず机をドンとたたいた。
「……豪い……君が探偵なら正に名探偵だ。僕もシャッポを脱がざるを得ないよ」
少年は極り悪げにうつむいた。
「……僕は電話口で芝浦にT三五八八の自動車が……という巡査の慌てた声を聞いた瞬間にそう思ったよ。志村夫人と樫尾運転手は、芝浦海岸から自動端艇に乗って逃走したに違いない……と……。そこで誰にも云わないで単身、オートバイを乗り付けて調べてみると、一寸普通人には気が付かないが自動車の幌のまん中に、かなりの近距離から発射したらしいピストルの新しい弾痕がある。これは樫尾がモーターボートを芝浦へ廻す手配を感付いたJ・I・Cの人間が先廻りをして、君のお母さんを狙撃したものに違いないので、人家から数町離れた海岸とはいえ、白昼にこんな危険を犯すのは尋常の目的でない事がすぐにわかるのだ。しかし車内には血痕も何も見当らないのでもしやと思って附近を探すと、かねてから君の両親を狙っていたJ・I・Cの鮮人の屍体を発見したのだ。つまりモーターボートの近くの石垣の蔭に隠れて待ち伏せていたのだね。……それからガソリンがなくなっていたのは無論ガソリンを使いつくす程長距離を走ったものではない。