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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

そう気がつくと同時に一層猛烈に藻掻きまわって、嬢次少年を一刻も早く引っ捕えるべく、焦躁りまわらずにはいられなくなった事がある。

それは他でもない。嬢次少年の「復讐」という事であった。嬢次少年はその両親の讐敵を取るべく私を手先に使って、曲馬団に致命的の打撃を与えているのだ……という私の直覚? であった。

私はこうした事実を頭の片隅で推理すると同時に、ほんとうにキチガイになりかねないくらい恐怖戦慄したのであった。絶叫し狂乱したのであった。……如何にJ・I・Cが日本民族の敵とはいえ、如何に曲馬団が兇悪無残の無頼漢の集まりとはいえ、又、バード・ストーン団長が如何に両親の仇とはいえ、これに致命的の打撃を与える手段として、何の罪も報いもない数十名の美人を狂馬の蹄鉄にかけて蹴殺させるというような極悪残忍な所業が、果して人間の……しかも一少年の頭から割り出され得ることであろうか。東洋文化の真只中、大東京の中心地として、馬場先の聖域と東京駅と、警視庁とを鼻の先に控えた晴れの場所で、ついこの間まで現役の探偵として多少共に人に知られた私をタマに遣って実行された事であろうか……というような疑問と驚愕とを一時に頭の中に閃めかせつつも、死に物狂いに虚空を掴んだのであった。